知っておきたい育児・介護の法定両立支援制度:働く人が使える権利と会社の義務
育児や介護が必要になった際、仕事との両立に不安を感じる方は少なくありません。特に、制度について十分に情報を得る時間がなかったり、職場の状況から利用をためらったりすることもあるかもしれません。しかし、法律で定められた両立支援制度は、働く方の権利として、また企業に課された義務として存在しており、両立を叶えるための大切な基盤となります。
この制度を正しく理解し活用することが、仕事と育児・介護のバランスを取りながら働き続けるための一歩となります。ここでは、育児・介護に関わる主な法定両立支援制度の基本と、働く方が知っておくべきポイントについて解説します。
育児・介護に関わる主な法定両立支援制度
国は、仕事と育児・介護の両立を支援するために、育児休業や介護休業をはじめとする様々な制度を法律で定めています。これらの制度は、働く方の状況に応じて利用できるものであり、企業は従業員からの申し出があった場合に適切に対応する義務があります。
主な法定両立支援制度は以下の通りです。
1. 育児休業制度
子供を育てるために取得できる休業制度です。原則として子供が1歳になるまで(一定の要件を満たす場合は最長2歳まで)、申し出により取得できます。父母それぞれが取得できるほか、一定期間を区切って両親が交代で取得したり、分割して取得したりすることも可能です。
2. 子の看護休暇制度
小学校就学前の子が病気や怪我をした際に、看護のために取得できる休暇です。対象の子が1人の場合は年5日、2人以上の場合は年10日まで、1日単位または時間単位で取得できます。
3. 育児のための所定外労働・時間外労働・深夜業の制限
小学校就学前の子を養育する従業員は、申し出により所定外労働、時間外労働、深夜業の制限を受けることができます。これにより、突発的な残業や夜間の勤務を避けることが可能になります。
4. 育児のための所定労働時間の短縮措置(時短勤務)
3歳未満の子を養育する従業員は、申し出により所定労働時間を原則として1日6時間に短縮できます。企業によっては、子の年齢が3歳以上になっても時短勤務を継続できる独自の制度を設けている場合もあります。
5. 介護休業制度
要介護状態にある家族を介護するために取得できる休業制度です。対象家族1人につき、通算93日まで、3回まで分割して取得できます。
6. 介護休暇制度
要介護状態にある家族の世話のために取得できる休暇です。対象家族が1人の場合は年5日、2人以上の場合は年10日まで、1日単位または時間単位で取得できます。子の看護休暇と同様に、突発的な介護ニーズに対応するために利用されます。
7. 介護のための所定外労働・時間外労働・深夜業の制限
要介護状態にある家族を介護する従業員は、申し出により所定外労働、時間外労働、深夜業の制限を受けることができます。
8. 介護のための所定労働時間の短縮措置
要介護状態にある家族を介護する従業員は、申し出により、介護休業とは別に、利用開始の日から3年の間で2回までの範囲で、所定労働時間の短縮等の措置を利用できます。
企業側の義務と取り組むべきこと
これらの法定制度に関して、企業には以下の義務などが課されています。
- 制度の周知: 育児・介護休業規程を作成し、従業員がいつでも閲覧できるようにするなど、制度内容を従業員に周知する義務があります。
- 不利益取扱いの禁止: 育児休業や介護休業などの制度を利用したことや、利用を申し出たことを理由として、従業員に対して解雇や降格などの不利益な取り扱いをすることは法律で禁止されています。
- ハラスメント防止措置: 育児休業や介護休業に関するハラスメント(制度利用に関する嫌がらせなど)を防止するための措置を講じる義務があります。
- 相談体制の整備: 従業員が育児や介護に関する相談ができる体制を整備することが求められています。
多くの企業では、これらの法定制度に加えて、独自の支援策を設けている場合もあります。例えば、法定を上回る休業期間の設定、対象となる子の年齢引き上げ、ベビーシッター利用費用の補助などが挙げられます。
制度を賢く活用するためのヒント
法定制度は、働く方の権利であり、両立を支援するための大きな後ろ盾となります。これらの制度を効果的に活用するためには、以下の点を意識すると良いでしょう。
- 会社の規程を確認する: まずは、勤めている会社の就業規則や育児・介護休業規程を確認しましょう。法定制度の基本的な内容に加え、会社独自の制度や上乗せ措置が定められている場合があります。
- 早めに会社に相談する: 制度の利用を検討し始めたら、できるだけ早めに上司や人事担当者に相談することをお勧めします。利用時期や期間、業務の引き継ぎなどについて事前に話し合うことで、会社側も準備を進めやすくなり、スムーズな制度利用につながります。
- 制度間の連携も検討する: 育児休業後に時短勤務を利用するなど、複数の制度を組み合わせて利用することも可能です。ご自身の状況に合わせて、最適な働き方を計画しましょう。
- 利用計画を共有する: 制度を利用する際は、自身の業務スケジュールや引き継ぎ事項などを周囲のメンバーに分かりやすく共有することが、職場の理解と協力を得る上で重要になります。
まとめ
育児や介護と仕事の両立は、多くの働く方が直面する課題です。しかし、法定で定められた育児・介護休業制度や時短勤務制度などは、両立を諦めずに働き続けるための強力な支えとなります。
これらの制度は働く方の権利であり、企業は適切に対応する義務があります。まずは自社の制度を確認し、必要に応じて早めに会社へ相談することから始めましょう。法定制度の知識を身につけることは、ご自身のキャリアを守り、より良い働き方を実現するための第一歩となります。情報収集の時間を確保することが難しい中でも、こうした基本的な情報を知っておくことが、いざという時に役立つはずです。