会社の育児・介護両立支援制度、どう探してどう使う?:担当部署から申請手続きまで徹底解説
育児や介護と仕事の両立は、多くの働く方にとって大きな課題です。特に、突発的な状況への対応や、限られた時間での情報収集は容易ではありません。会社には、法定の制度に加えて、企業独自の様々な両立支援制度が設けられていることがあります。これらの制度を有効に活用することは、両立の負担を軽減し、安心して働き続けるために非常に重要です。
しかし、「自分の会社にどんな制度があるのか分からない」「どうやって調べたらいいの?」「利用するためには誰に相談して、どんな手続きが必要なの?」といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、自社の育児・介護両立支援制度の情報を見つける方法から、実際に制度を利用するための相談先、申請手続きについて、具体的なステップを追って解説します。
自社の両立支援制度はどこにある?情報を探す第一歩
まず、自社の両立支援制度に関する情報がどこにまとめられているかを知ることが出発点です。主な情報源としては、以下の場所が考えられます。
- 就業規則・賃金規程・育児介護休業規程など会社の規程集: 法定の育児休業や介護休業、子の看護休暇、介護休暇などに関する基本的な内容は、会社の規程に定められています。企業によっては、法定を上回る手厚い制度や、独自の休暇制度などもここに記載されている場合があります。
- 社内ポータルサイト・イントラネット: 多くの企業では、社内ポータルサイトに人事関連の情報が集約されています。「育児」「介護」「両立支援」「福利厚生」といったキーワードで検索してみると、関連する制度の詳細や、申請書類のダウンロードリンクが見つかることがあります。最新の情報が掲載されている可能性が高い場所です。
- 人事部・総務部などの担当部署: 制度に関する最も正確で詳細な情報は、人事部や総務部など、これらの制度を管轄している部署が持っています。後述しますが、疑問点があれば直接問い合わせるのが最も確実です。
- 社内報や説明会資料: 過去に制度改定があった場合や、新しい制度が導入された際に、社内報で周知されたり、説明会が開かれたりしていることがあります。バックナンバーや資料を確認するのも一つの方法です。
情報収集に時間をかけられない場合は、まず社内ポータルサイトで検索するか、担当部署に問い合わせるのが効率的でしょう。
どんな制度があるか知っておこう:法定と企業独自の両立支援制度
自社の規程や情報を確認する際に、どのような制度があるのかを把握しておくと、自分に必要な制度を見つけやすくなります。代表的な制度には以下のようなものがあります。
- 育児休業・介護休業: 法定で定められた、子の養育または家族の介護のために取得できる休業制度です。取得できる期間や条件は法律で定められていますが、企業によってはより長く取得できたり、対象を広げたりしている場合があります。
- 短時間勤務制度(時短勤務): 3歳未満の子を養育する従業員や、要介護状態の家族を介護する従業員が利用できる法定の制度です。勤務時間を短縮して働くことができます。企業によっては、対象となる子の年齢を引き上げたり、取得期間を延長したり、フレックスタイム制度やリモートワーク制度と組み合わせて柔軟な働き方を可能にしている場合もあります。
- 子の看護休暇・介護休暇: 病気や怪我をした子の看護や、要介護状態の家族の世話のために、単日または時間単位で取得できる法定の休暇です。
- 時間外労働・深夜業の制限: 小学校就学前の子を養育する従業員や、要介護状態の家族を介護する従業員は、請求すれば法定の範囲を超えた時間外労働や深夜業が制限されます。
- 法定外の企業独自制度: 企業によっては、小学校入学以降の子を対象とした短時間勤務制度、不妊治療のための休暇、ボランティア休暇(介護関連活動含む)、ベビーシッターや病児保育の費用補助、社内相談窓口、両立支援セミナーの開催など、法定以上の様々な支援制度や福利厚生を用意している場合があります。
これらの制度が自社にあるか、どのような内容なのかを具体的に確認することが、制度活用の第一歩です。
制度利用までのステップ:誰に相談し、どう申請する?
自社にどのような両立支援制度があるか把握したら、実際に制度を利用するためのステップに進みます。
- 情報収集と自己整理: まずは会社の規程やポータルサイトで、利用したい制度の概要、対象者、期間、申請方法、必要な書類などを確認します。その上で、ご自身の状況(子の年齢、介護の状況、希望する利用期間、希望する働き方など)を整理しておきましょう。
- 担当部署や上司への相談: 制度利用を検討していること、希望する働き方や期間について、まずは担当部署(人事部など)または直属の上司に相談することをお勧めします。特に、育児休業や介護休業、短時間勤務制度の利用は、チーム内の業務分担や引き継ぎに関わるため、早めに意向を伝えることが重要です。
- 担当部署への相談: 制度の詳細や手続きについて不明な点があれば、人事部などに問い合わせます。制度の解釈や具体的な手続きについて、正確な情報を得ることができます。
- 上司への相談: 上司には、制度を利用したい意向に加え、希望する利用期間や働き方、業務への影響(想定される引き継ぎ内容、自身の担当業務の調整案など)について具体的に伝えることが、その後の円滑な手続きにつながります。相談の際は、漠然とした不安を伝えるだけでなく、「この制度を利用することで、〇〇のような働き方をしたい」「そのために、現在の〇〇の業務を△△のように調整できないか」といった、具体的な提案を交えると建設的な対話につながりやすいでしょう。
- 必要書類の準備と申請: 会社の規程や担当部署の案内に従って、必要な申請書類(例:育児休業等申出書、短時間勤務等申出書など)を作成します。必要に応じて、住民票や医師の診断書など、添付書類が必要になる場合もあります。書類の準備ができたら、会社の指定する方法(人事部へ提出、システム入力など)で申請を行います。
- 会社による承認・手続き: 提出された申請書類に基づき、会社が制度の利用要件を満たしているかなどを確認し、承認を行います。承認後、制度の利用開始となります。短時間勤務の場合は、給与計算や社会保険手続きに変更が生じるため、これらの手続きも会社側で行われます。
制度を使いこなすためのヒント:周囲との連携が鍵
制度を利用して両立を続けるためには、制度を申請するだけでなく、利用中もいくつかの点を心掛けるとスムーズです。
- 事前の計画と情報共有: 制度利用期間中の自身の業務内容や、周囲への引き継ぎ事項について、事前にしっかりと計画を立て、チーム内に情報共有することが重要です。
- コミュニケーション: 短時間勤務中や、子の病気などで急に休む必要がある場合など、日頃から上司や同僚と密にコミュニケーションを取り、業務の状況や連絡先などを共有しておくことで、周囲の理解と協力を得やすくなります。
- 利用期間の見直し: 制度によっては、利用期間の延長や短縮が可能な場合があります。状況が変わった場合は、会社の規程を確認し、必要であれば再度相談・申請を行うことも検討しましょう。
まとめ
育児や介護と仕事を両立するためには、まず自社にどのような両立支援制度があるのかを知ることが第一歩です。会社の規程や社内ポータルで情報を探し、不明な点は人事部などの担当部署に問い合わせてみましょう。制度利用の際には、担当部署や上司に早めに相談し、具体的な利用計画や業務調整案を伝えることで、円滑な手続きと周囲の協力を得やすくなります。
制度を知り、活用することは、自分自身が安心して働き続けるためだけでなく、企業全体で多様な働き方を認め、支え合う文化を育むことにもつながります。一人で抱え込まず、利用できる制度や周囲のサポートを積極的に活用しながら、仕事と育児・介護の両立を実現していきましょう。